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獣医学専攻オープンセミナー2016(1)

大阪府立大学大学院生命環境科学研究科

獣医学専攻オープンセミナー2016(1)

(大学院講義:獣医環境科学特別講義)

 

日時:2016年6月13日(月)17:00−18:30

場所:りんくうキャンパス2F第1講義室(First lecture room)

 

「インフルエンザウイルスとその活性化酵素」

 

竹田 誠

 

国立感染症研究所 ウイルス第三部 部長

 

インフルエンザウイルスは、粒子表面に二種類のスパイクタンパク質(ヘマグルチニン HAとノイラミニダーゼ NA)を持っている。HAは、受容体への結合とウイルスエンベロープと細胞膜との融合を担う感染に必須のタンパク質である。ただし、HAが膜融合能を発揮するためには、宿主のプロテアーゼによって、特定のアミノ酸配列部位で開裂される必要がある。すなわち、宿主のプロテアーゼが、インフルエンザウイルスの増殖や病原性に深く関与している。高病原性鳥インフルエンザウイルスとは、そのアミノ酸配列部位の変異によって、プロテアーゼ特異性が変化したウイルスである。最近、私たちは、呼吸器上皮に発現しているプロテアーゼTMPRSS2こそが、季節性インフルエンザウイルスや近年中国で問題になっているH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスのHAを開裂する宿主プロテアーゼであることを明らかにした。TMPRSS2遺伝子をノックアウトしたマウスの生体内では、インフルエンザウイルスは感染性を獲得しないため、致死量の数百倍のインフルエンザウイルスを接種しても、そのマウスは症状すら示さない。本セミナーでは、インフルエンザや、その他の呼吸器ウイルス感染症におけるTMPRSS2の意義について紹介する。

 

連絡先:生命環境科学研究科獣医国際防疫学教室

山崎伸二(内線2546)E-mail: shinji@vet.osakafu-u.ac.jp