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獣医学専攻オープンセミナー2017年度(9)

日時:2018年1月25日(木)14:30−15:30

場所:りんくうキャンパス2F第2講義室(Second lecture room)

 

「TLR5における一塩基多型(C1205T)が豚のサルモネラ症抵抗性に及ぼす影響」

Effect of a single nucleotide polymorphism of TLR5 gene on resistance to porcine salmonellosis

 

秋庭 正人、Masato Akiba

 

動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域 領域長

Division Head, Division of Bacterial and Parasitic Disease Research, National Institute of Animal Health, National Agriculture and Food Research Organization

 

Toll-like receptor (TLR) は細菌・ウイルスの構成成分を認識し、その後の自然免疫応答を誘導して感染防御に関与する一群のパターン認識受容体である。このうちTLR5は細菌の鞭毛認識に関与しており、これまでに我々は数箇所の一塩基多型(SNP)が、ある種の豚のTLR5に偏在することを見出した。特にSNP (C1205T) について、当該SNPを含むTLR5をトランスフェクションした培養細胞を用いた実験で、当該SNPがサルモネラの認識能力低下に関与することを見出した。そこで本研究では、当該SNPをヘテロ、 あるいはホモに有するSPF離乳子豚にSalmonella enterica serovar Typhimurium (ST) を感染させることにより、当該SNPのST感染に及ぼす影響を検証することを目的とした。

SNP (C1205T、P402L) をヘテロに有するランドレース豚を交配して得られた妊娠母豚より作出した5週齢SPF離乳子豚18頭 (野生型CC型6頭、ヘテロ型CT型6頭、変異型TT型) に病豚由来ST (L-3569株) を経口感染させた (107-8 cfu/頭、 2日間連続)。対照群として非感染群3頭 (CC型1頭、CT型1頭、TT型1頭) を実験に供した。採血、 採材 (直腸スワブ) を感染前、初回感染後2日目及び3日目、1週間毎に行い、5週目に安楽殺した。感染後の病態変化 (下痢及び発熱)、排菌状況、抗体応答、 サイトカイン応答及び解剖時の主要臓器からのST検出状況に関して、各群を比較した。感染群18頭は感染後1週間にわたり、サルモネラ症による発熱あるいは下痢が観察された。試験期間中の平均下痢スコアはTT、CT、CCの順に高くなり、初回感染後2日目から21日目の直腸スワブ中の生菌数はCC型と比較して、CT型とTT型で有意に多かった。感染後1週間を比較すると、TT型で発熱が最も長く持続し、炎症マーカーの一つである血清中ハプトグロビン濃度は感染群で上昇し、その増加割合はTT、CT、CCの順に大きかった。試験期間中の一日増体重は、非感染群より感染群は低く、TT群は最も低かった。

以上の結果より、豚のTLR5における当該SNPは生体のサルモネラ感染に対する抵抗性を減弱させる可能性が示唆された。当該SNPを排除することで豚のサルモネラ症に対する抗病性育種の実現につながることが期待される。

 

連絡先:生命環境科学研究科獣医国際防疫学教室

山崎伸二(内線2546)E-mail: shinji@vet.osakafu-u.ac.jp