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獣医学専攻オープンセミナー2019年度(4)

日時:2020年2月3日(月)16:15−17:45

場所:りんくうキャンパス2F第1講義室(First lecture room)

 

「ワンヘルスの視点から薬剤耐性菌の問題を考える」

Thinking about the issue of antimicrobial resistance from a perspective of One-Health

 

秋庭 正人、Masato Akiba

 

農研機構動物衛生研究部門 研究推進部 部長

National Institute of Animal Health, National Agriculture and Food Research Organization

 

分布率が増加する薬剤耐性菌に対して何の対策も取らない場合、2050年には世界で1000万人が死亡すると推定され、現在のがんによる死亡者数を超えるといわれている。このような状況下、我が国においても薬剤耐性対策アクションプランが策定され、2020年度までに医療分野のみならず家畜衛生分野でも達成すべき数値目標などが示されている。人の薬剤耐性菌の問題を家畜と結びつけた報告としては、1969年に英国議会に提出された、いわゆる「スワンレポート」が有名である。この報告では、家畜の生産現場において抗菌剤使用により選択された薬剤耐性菌が畜産物を介して人に到達し、健康被害を及ぼす可能性が指摘されている。以来、家畜における薬剤耐性菌の問題については多くの調査・研究が行われてきたが、近年は人と家畜のみならず、伴侶動物、野生動物、環境なども含めて分野横断的に問題解決に取り組むワンヘルスアプローチによる取り組みが注目を集めている。我々はこれまで医学、獣医学、環境化学、ゲノム微生物学の専門家を結集して国内外で薬剤耐性菌の研究を展開してきた。抗菌剤の使用量が多く、ある種のカルバペネム系抗菌剤耐性遺伝子の発祥地としても知られるインドにおいては病院排水が環境の薬剤耐性菌汚染に寄与していることや、重要な薬剤耐性遺伝子を載せた類似の遺伝的背景を有するプラスミドがインド国内の広い範囲で分離できることなどを明らかにした。国内では養豚場の抗菌剤使用量を把握するとともに、使用された抗菌剤の環境中での消長、薬剤耐性菌の分布率、抗菌剤の使用を中止した後の分布率の変化等を調べている。本講義ではこれらの成績の一部を紹介する。

 

連絡先:生命環境科学研究科獣医国際防疫学教室

山崎伸二(内線2546)E-mail: shinji@vet.osakafu-u.ac.jp