新たな治療への挑戦

コンパニオンアニマルにおける薬剤耐性菌の疫学調査

代表者:安木 真世

世界的規模で問題となっている薬剤耐性(AMR)感染症は、ヒトに限られた問題ではなく、One world one healthの観点から獣医学領域においても非常に重要です。近年、ヒトと最も密接に関わる伴侶動物の耐性菌について、多数の報告があがっています。AMR感染症のキャリアの可能性が議論されていますが、大規模な動向調査など耐性菌保菌の実態に関する知見が乏しく、未だその詳細は不明のままです(図)。

本研究では、伴侶動物を介した環境、そしてヒトへの耐性菌拡散の可能性の評価、更には「臨床獣医師に対する抗菌薬の適切かつ慎重投与の啓発活動」の基盤の創出を最終目的として、獣医臨床センターに来院した伴侶動物を対象に、耐性菌保菌の実態把握の調査研究を行っています。


樹状細胞治療の放射線治療との併用による腫瘍治療効果の検討

代表者:杉浦 喜久弥

樹状細胞は、「体を害するもの」が何であるかを、攻撃の主体であるリンパ球に示す機能を持ちます(図1)。

図1

この特性を利用したのが「樹状細胞治療」です。体外で育てた樹状細胞を体内に戻すことにより、腫瘍(がん)を治療しますが、がん細胞の多くは正常細胞との区別が困難です(図2)。

図2

放射線はがん細胞を弱らせ、性質や形を変えることができます。そこで、「放射線治療」と「樹状細胞治療」を組み合わせることにより、効果的にがん細胞を除くことができます(図3)。

図3


入院中の生理指標についての調査

代表者:島村 俊介

入院中であるという特殊な環境に加え、何らかの疾患を有している、あるいは手術後であるなど、健康的な日常とは大きく乖離したストレス環境下における犬と一般家庭において健康的な日常を過ごす非ストレス環境下における犬の連続的な生体情報を比較し、動物の健康管理や状態把握への可能性について検討することを目的とした研究を行なっています。


新規開発油分含有人工涙液、スクワラン点眼液、の臨床例における有用性検証

代表者:長谷川 貴史

涙液膜は眼球表面(オキュラーサーフェース)の恒常性維持になくてはならないものであるが、涙液膜の異常状態ではヒトのドライアイと同様の症状が動物にも認められるようになる。このような時には角結膜に様々な異常が引き起こされるため、人工涙液を用いた点眼治療、多くの場合、1-2時間間隔の点眼処置が適用されることとなる。しかし、このような点眼処置を長期間、さらには生涯にわたり実施することは、現実的に不可能であり、多くの動物で角結膜障害が重篤化して視覚に異常をきたしてしまう。

以上のような煩雑で非現実的な投薬処置を是正すべく、1日4回程度の点眼処置で済むような長時間作用型の油分含有人工涙液であるスクワラン点眼液を開発し、涙液膜異常の症例に用いてその臨床的有用性を確認している。さらに、スクワラン点眼液が角膜潰瘍の治療薬としても使用可能なことが示唆されているため、この点に関しての検証治験も現在併行して実施しつつある。