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福岡県“One Health”国際フォーラム2022にて堀江が講演を行います

2022年3月1日に開催される「福岡県“One Health”国際フォーラム2022」にて、堀江が大規模ウイルス探索に関する講演を行います。WEB開催になりましたので、事前申込は不要です。

福岡県“One Health”国際フォーラム2022のウェブサイトはこちら

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2022年3月1日(火)12:00~のセッション
分科会1 人と動物の共通感染症
演題「次なる新興感染症対策へ向けて:大規模ウイルスメタゲノム解析とその性状解析」

ユビナガコウモリ属コウモリのゲノムに存在するボルナウイルス由来の遺伝子配列の解析に関する論文がFEBS Letters誌に公開されました

ユビナガコウモリ属コウモリのゲノムに存在するボルナウイルス由来の遺伝子配列の解析に関する論文が、FEBS Letters誌に公開されました。

An endogenous bornavirus-like nucleoprotein in miniopterid bats retains the RNA-binding properties of the original viral protein
Yahiro Mukai,Masayuki Horie*,Shohei Kojima,Junna Kawasaki,Ken Maeda,Keizo Tomonaga*
doi: 10.1002/1873-3468.14290

ウイルスの遺伝子配列の一部が生物ゲノムへと組み込まれ、生物ゲノムの一部となる現象を「内在化」と呼びます。多くの脊椎動物のゲノムには、太古のボルナウイルスに由来する遺伝子配列である「内在性ボルナウイルス様配列(Endogenous bornavirus-ilke: EBL配列)」が存在します。これまでにEBL配列の一部が、生物においてなんらかの生体機能をもつことが報告されていました。しかし、内在化後のEBL配列の進化や、由来する遺伝子との機能的な関係についてはほとんど明らかになっていませんでした。

本研究ではボルナウイルスのN遺伝子(ウイルスゲノムRNAに結合するNタンパク質をコードする)に由来する「EBLN」に着目し、RNA結合タンパク質として機能し得るタンパク質をコードするEBLNを同定し、解析を行いました。

In silicoによる予測および分子進化学・分子生物学的な解析により、ユビナガコウモリ属コウモリゲノムに存在するEBLN (miEBLN-1) が、機能をもつRNA結合タンパク質をコードすることが強く示唆されました。生化学的な実験により、miEBLN-1タンパク質が実際にRNAに結合するとともに、ユビナガコウモリ細胞において多数のRNA結合タンパク質と相互作用することを明らかにしました。さらに、ボルナウイルスのRNA結合において重要な役割を果たす4つのアミノ酸残基がmiEBLN-1タンパク質にも保存されており、これらのアミノ酸残基がmiEBLN-1タンパク質のRNA結合能にも重要な役割を果たすことを示しました。

これらの結果から、miEBLN-1は起源となるボルナウイルスのN遺伝子がコードするNタンパク質と類似した生化学的性状を持つタンパク質をコードしており、生体において何らかの重要な役割を持つことが強く示唆されました。残念ながらその機能を明らかにすることはできませんでした。

本研究によって得られた知見は、ウイルスと生物の共進化の解明の一助となることが期待されます。

Epteiscus属コウモリ細胞株における自然免疫反応を網羅的に解析した論文がMicrobiology and Immunology誌に公開されました

Eptesicus属コウモリの培養細胞における自然免疫反応を網羅的に解析した論文がMicrobiology and Immunology誌に公開されました。

A comprehensive profiling of innate immune responses in Eptesicus bat cells.
Lin HH, Horie M*, Tomonaga K*.
Microbiol Immunol. 2021 Nov 29. doi: 10.1111/1348-0421.12952.

本論文ではE. fuscusおよびE. nilssonii由来の細胞株にPoly (I:C) を導入し、mRNA-seqおよびsmall RNA-seqによって網羅的に自然免疫反応を解析しました。以下、概要を簡単に説明します。

コウモリは、ヒトや家畜の新興感染症ウイルスの自然宿主であることが報告されています。コウモリはこれらのウイルスに感染しても明らかな症状を示さないことが報告されており、独特の免疫機構を持っていると考えられています。しかし、コウモリ細胞において免疫の最前線である自然免疫系が、ウイルス感染に対してどのような反応を示すのかについてはほとんど分かっていません。

本研究では、2種のEptesicus属コウモリに由来する細胞株を用い、poly (I:C) 導入後の遺伝子発現プロファイルをmRNA-seqとsmall RNA-seqにより網羅的に解明しました。

(中略、詳細は論文をご覧ください)

本研究は、Eptesicus属コウモリの細胞における自然免疫反応を網羅的に解析した最初の報告であり、コウモリの自然免疫機構の解明の一助となることが期待されます。また本研究で得られたデータは、今後のコウモリの免疫や生態の研究における礎となるでしょう。

ちなみに本研究で用いたE. nilssoniiの細胞株であるHAMOI-EnK細胞は自作の細胞株で、2016年に発表しています。いつでも分与可能です。

Establishment and characterization of a cell line derived from Eptesicus nilssonii.
Horie M, Akasaka T, Matsuda S, Ogawa H, Imai K.
J Vet Med Sci. 2016 Dec 1;78(11):1727-1729. doi: 10.1292/jvms.16-0274.

「実験医学」に「公共データの再利用による未知RNAウイルスの探索」が掲載されました

「実験医学 2021年12月号(Vol.39 No.19)みんなのバイオDX -公共データの海で宝探しをはじめよう-」に、日本語総説の「公共データの再利用による未知RNAウイルスの探索」が掲載されました。

公共データの再利用による未知RNAウイルスの探索【川崎純菜,堀江真行】
[コラム]Virome解析にかかる計算コスト削減のために利用可能な公共データベース【川崎純菜,堀江真行】

先日発表したデルタウイルスやウイルス探索の論文について、日本語で解説しています。

ボルナ病ウイルスの封入体形成機構に関する論文がInternational Journal of Biological Macromolecules誌に公開されました

少し更新を忘れていましたが、ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BoDV)の封入体形成機構に関する論文がInternational Journal of Biological Macromolecules誌に公開されました。

Borna disease virus phosphoprotein triggers the organization of viral inclusion bodies by liquid-liquid phase separation
Yuya Hirai, Keizo Tomonaga, Masayuki Horie

Int J Biol Macromol.;192:55-63. doi: 10.1016/j.ijbiomac.2021.09.153.

本論文ではBoDVの封入体形成機構について、液液相分離(liquid-liquid phase separation: LLPS)の観点から解析を行いました。また近いうちに詳しい内容をアップしたいです。

公共データの再利用による大規模ウイルス検出に関する論文がmBioに公開されました

先日にプレプリントとして公開した論文がmBio誌に公開されました。

Hidden Viral Sequences in Public Sequencing Data and Warning for Future Emerging Diseases
Kawasaki J, Kojima S, Tomonaga K, Horie M.
mBio. 2021 Aug 17:e0163821. doi: 10.1128/mBio.01638-21

本研究では公共データベースに存在する鳥類および哺乳類動物由来のRNA-seqデータを解析し、RNAウイルスを検出・解析しました。

ディープシークエンスは存在する核酸(DNAやRNA)を網羅的に検出する技術です。公共のデータベース(例えばNCBI SRA)には大量のディープシークエンスデータが登録されています。これらのデータの多くはウイルス検出用に取得されたものではありませんが、由来となる動物がウイルスに感染していた場合、シークエンスデータにウイルス由来の配列が含まれます。

本研究では鳥類および哺乳動物由来の46,000以上のRNA-seqデータを網羅的に解析し、大量のRNAウイルスを検出しました。本研究によって、公共データの再利用によるウイルス探索の有用性が示されました。

爬虫類のフィロウイルスに関する論文がThe Journal of veterinary medical science誌において公開されました

爬虫類のフィロウイルスに関する論文がThe Journal of veterinary medical science誌において公開されました。

Identification of a novel filovirus in a common lancehead (Bothrops atrox (Linnaeus, 1758))
Masayuki Horie
DOI: 10.1292/jvms.21-0285

本研究では公共データベースに存在する爬虫類動物由来のRNA-seqデータを解析し、世界で初めて爬虫類のフィロウイルスを発見しました。

ディープシークエンスは存在する核酸(DNAやRNA)を網羅的に検出する技術です。公共のデータベース(例えばNCBI SRA)には大量のディープシークエンスデータが登録されています。これらのデータの多くはウイルス検出用に取得されたものではありませんが、由来となる動物がウイルスに感染していた場合、シークエンスデータにウイルス由来の配列が含まれます。

フィロウイルスはモノネガウイルス目フィロウイルス科のウイルスで、エボラウイルスなどが知られています。これまで様々な脊椎動物からフィロウイルスが検出されていますが、爬虫類のフィロウイルスは知られていませんでした。

本研究では公共データベースを用いたウイルス探索により、カイサカというヘビ(Bothrops atrox)由来のRNA-seqから新規のフィロウイルスを検出し、その採取地名にちなんでTapajós virus (TAPV) と名付けました。分子系統樹解析の結果、TAPVは既知のフィロウイルスとは遺伝的に極めて遠く、フィロウイルス科の新しい「属」のウイルスであることが示唆されました。

本研究によって、フィロウイルスの多様性と進化に関する新しい知見が得られました。近いうちに、フィロウイルス科に新しい属ができるかもしれません。これまで新しい属の設立につながるようなウイルスを見つけたことはなかったので、とても嬉しいです。

Journal of General Virology誌に「ICTV Virus Taxonomy Profile: Bornaviridae」が公開されました

堀江が参加しているICTV(国際ウイルス分類委員会)のBornaviridae Study Groupが執筆した「ICTV Virus Taxonomy Profile: Bornaviridae」が、Journal of General Virology誌に公開されました。

DOI: https://doi.org/10.1099/jgv.0.001613

長らく更新されていなかったICTVのボルナウイルス科(Bornaviridae)のチャプターを更新したため、本論文(?)ではその要点を紹介しています。チャプター全文については下記のサイトにアクセスしてください。

ICTV: Bornaviridae

多様なウイルスが次々と発見されており、ウイルスの分類が凄まじい勢いで変更されています。ボルナウイルスも例外ではありません。例えば私が学部生の頃は、ボルナウイルス科は1科1属1種(ボルナウイルス属ボルナ病ウイルスのみ)でしたが、現在ではボルナウイルス科には3属が設立されています。おそらく今後も増えていくのではないでしょうか。今後、獣医学教育においてどこまで教えるべきなのでしょうか。

余談ですが、ICTVは著者の名前に関して非ラテン文字での表記をしてくれており、論文でも漢字の名前が出るので面白い(?)です。ここでも私の著者名は「Masayuki Horie (堀江真行)」と表記されています。

ポッドキャスト「TWiV」で堀江らの研究が紹介されました!

ウイルス学界隈で有名なポッドキャスト「This Week in Virology」で堀江の内在性ボルナウイルス配列に関する研究が取り上げられました。とても嬉しいです。ぜひ聴いてみてください。
まだ堀江も聴いていません(2021年6月22日現在)。

TWiV 771: Borna hundred million years ago

PNAS誌のCommentaryにおいて堀江らの研究成果が紹介されました

PNAS誌のCommentaryにおいて、私たちの発表したボルナウイルス感染の歴史に関する論文が紹介されました。

Mapping the evolution of bornaviruses across geological timescales
Robert J. Gifford
https://doi.org/10.1073/pnas.2108123118

こちら、古代ウイルス学(Paleovirology)に関する簡単な説明や現在の問題についても説明されていて、読み応えがあります。

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