Research

【ウェルシュ菌の食中毒発症メカニズム解析】(担当:安木、三宅)

A型ウェルシュ菌はヒトの食中毒原因菌です。食品中でこの菌が大量に増殖し、気付かずに人がそれを食べてしまうと、食中毒を発症します。「バイ菌を食べると病気になる」、それは単純に聞こえますが、本当にそんなに単純なのでしょうか?

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人に摂取された菌(栄養型)は腸管に到達します。ここで菌がエンテロトキシンという毒素を産生すると、毒素の作用で人は下痢を発症します。エンテロトキシンは菌が「芽胞」を形成するときに産生されることがわかっているので、腸管内で栄養型の菌が芽胞に変化しているのだと考えられます。実際、ウェルシュ菌食中毒患者の下痢便中には芽胞が大量に検出されます。

ここでの疑問は、なぜウェルシュ菌は腸管内で芽胞を作るのだろうか?ということです。菌が芽胞を作らなければ毒素も産生されず、人は下痢を発症しないはずです。もし、菌が腸管内で芽胞を形成する仕組みを理解し、これを人為的に操作できるようになったならば、例えウェルシュ菌を食べてしまっても食中毒を発症させずに菌を排除できるかもしれません。

私達の研究室では、このような戦略で食中毒の予防が可能ではないかと考え、ウェルシュ菌が腸管内で芽胞を形成する刺激因子と、その作用を受けた菌がどんなメカニズムで芽胞を形成するのか(そして結果的に毒素を産生するのか)について研究しています。

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【細菌感染症とインターフェロンγ】(担当:松澤)

自然免疫は病原体認識ならびに炎症反応の惹起や獲得免疫の誘導に重要な役割を果たしている生体防御メカニズムです(参考文献1)。自然免疫機構はToll-like receptor(TLR)ファミリー分子による病原体構成成分の認識、炎症性サイトカインやインターフェロンの発現誘導とインターフェロンによるマクロファージなどの貪食細胞の活性化に大別されます。インターフェロンによるマクロファージの活性化機構はウイルス、細菌、原虫などの病原微生物に対する免疫にとどまらず、腫瘍に対する免疫においても非常に重要なステップです(参考文献2、3)。インターフェロンーガンマ刺激により1,000〜1,300種類のインターフェロン誘導性タンパク質の発現がおき、マクロファージの殺菌作用が増強されますが、その作用への関与が明らかになっているタンパク質はNOS2/iNOS(参考文献4)やIrgm1/IRGM(参考文献5、6)などごく一部であり、インターフェロンによるマクロファージの活性化機構、いわば自然免疫の後半部分はいまだにナゾの多い領域です。

ヒトと動物に病気を起こす人獣共通感染症起因菌である、結核菌やサルモネラ、リステリアは宿主細胞の中まで侵入し増殖する細胞内寄生菌です。これら細胞内寄生菌の感染防御にはインターフェロンーガンマが誘導する免疫機構が重要です。そこで私たちのグループでは特に細胞内寄生菌に対するインターフェロン誘導性免疫メカニズムの解明を大きな研究目的としています。

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【腸管病原性大腸菌の背景】(担当:三宅)

 腸管病原性大腸菌(英語の頭文字を取ってEPECと呼ばれる)は、ヒトでEPEC下痢症を引き起こします。EPEC下痢症はいわゆる食品媒介性感染症(食中毒)の1つで、加熱不充分な食品や、菌に2次汚染された食品を生で食べることで、EPECが経口感染して発症します。下痢の原因となるEPECですが、これは全部で4〜5つのカテゴリーに分類される下痢原性大腸菌の1カテゴリーに過ぎません。他のカテゴリーや下痢原性大腸菌の全体像については、いろんなサイトに紹介されているので、それらを参照してください。

 さて、私達はこのEPECが宿主細胞に感染し、病気と関連した細胞レベルの病理変化を引き起こすまでの経過を、分子のレベルで解明したいと考えるようになりました。その経緯の詳細と、これまでに発見した2つの成果については別ページで確認してください。

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