ニュース

category

獣医学専攻オープンセミナー2017(2)

日時:2017年8月4日(金)16:30−17:30

場所:りんくうキャンパス2F 第1講義室(lecture room 1, B-211)

 

ゲノム編集を利用した精巣特異的遺伝子の網羅的機能解析

伊川 正人 博士

大阪大学微生物病研究所 附属遺伝情報実験センター

遺伝子機能解析分野 教授

 

CRISPR/Cas9ゲノム編集システムの登場により、遺伝子破壊マウスの作製がコスト、労力、期間などの点において大きく改善した。本講演では、同法を活用し、我々の研究室で行っている精巣特異的に発現する遺伝子群の遺伝子破壊 (KO) マウス作製と表現型解析について報告する。我々は、文献およびデータベース検索から、ヒトとマウスで保存されており、精巣特異的に発現する遺伝子を約1,000個リストアップした。これまでに従来法を含めて約80遺伝子のKOマウスを作製し、妊孕性を調べたところ、約7割に相当する54遺伝子のKOマウスでは外見上の異常および妊孕性の低下も認められなかった(1)。これらの結果は、遺伝子の発現様式だけでは、個体レベルでの遺伝子機能やその重要度が分からないことを示している。その一方で、精子カルシニューリンなど、精子受精能力に必須な新規遺伝子も見つけることができた(2)。言い換えれば、ゲノム編集技術を活用すれば、個体レベルで重要な遺伝子を先に選び出して研究を進められることから、費用や労力・時間に対して得られる成果が大幅に改善され、生物学研究に躍進をもたらすと言える。

なお本講演では、CRISPR/Cas9を用いた点変異による解析例や、ES細胞を用いたキメラ解析についても紹介し(3-4)、その有用性について議論したい。

 

【参考文献】

  1. Miyata et al., PNAS 2016;113:7704-10.
  2. Miyata et al., Science. 2015;350:442-5.
  3. Kato et al., Nat Commun 2016;7:12198.
  4. Oji et al., Sci Rep. 2016;6:31666.

 

連絡先:生命環境科学研究科獣医公衆衛生学教室

三宅眞実(内線2576)E-mail: mami@vet.osakafu-u.ac.jp