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獣医学専攻オープンセミナー2018(1)

日時:2018年5月9日(水)16:30−17:30

場所:りんくうキャンパス2F 第2講義室(lecture room 2, B-205)

 

病原体媒介節足動物のバイオロジー

嘉糠 洋陸 博士

東京慈恵会医科大学 熱帯医学講座 教授

衛生動物学研究センター センター長

 

マラリアという病気は、蚊によって伝わることは誰でも知っている。それは時によって「吸血時の物理的な接触によって病原体がうつる」と誤解されていることが多い。実際には、マラリア原虫などの病原体は、それを運ぶ節足動物の体内における固有のライフサイクルを持っており、その体内での増殖・分化の過程を経て、次の宿主へと媒介される。興味深いことに、節足動物自身は病気になることはなく、病原体を運搬するカーゴとしてのみ機能している。節足動物によって媒介される感染症には、マラリアの他に西ナイル熱・日本脳炎・フィラリアなどがあり、依然として世界的に大きな問題となっている。その傍ら、この節足動物を介した病原体のライフサイクルは、遙か昔から保存されてきたものであり、その媒体である節足動物自身も多様な生命現象の宝庫である。我々は、ハマダラカ、ヤブカ、マダニ、ノミ、サシガメ、甲虫などを研究対象に、病原体・媒介節足動物間相互作用から、遺伝子診断技術の応用開発にいたるまで、幅広く研究を進めている。これらのリアルな媒介節足動物を軸に据えた我々の最新の知見を紹介したい。

 

略歴:

嘉糠洋陸(かぬか ひろたか)

1973年、山梨県に生まれる。1997年東京大学農学部獣医学科卒業。2001年大阪大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士(三浦正幸・岡野栄之両博士に師事)。理化学研究所、スタンフォード大学、東京大学大学院薬学系研究科を経て、2005年より帯広畜産大学原虫病研究センター・教授。2011年6月より東京慈恵会医科大学熱帯医学講座・教授。

 

 

連絡先:生命環境科学研究科 獣医公衆衛生学教室

三宅眞実(内線2576)E-mail: mami@vet.osakafu-u.ac.jp