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新任教員研究発表会

日時:2021年9月22日(水)午後1時〜午後3時(予定)
場所:ZOOM会議室(入室情報は当日の朝、改めて送信します)
発表者:富張瑞樹先生(特殊診断治療学研究グループ)、石川真悟先生(大動物臨床医学研究グループ)
発表内容:
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富張瑞樹先生(特殊診断治療学研究グループ

タイトル:レトリーバー種で認められたスイマパピー症候群の発症要因に関する検討
 スイマーパピー症候群とは、新生子期の犬や猫にみられ、四肢または前肢・後肢が側方に展開し、swimmer様の動作を主徴とする起立不能疾患である。本症候群は新生仔の特徴的な動きのみがクローズアップされることが多く、その病態や、診断基準、治療法について未だ不明な点が多い。原因についても、整形学的、神経学的、栄養学的、遺伝的、環境的要因が示唆されてはいるが、明らかとはなっていない。これはおそらく、「症候群」という名前で、同様の動きを伴う多犬種の病態すべてをひとくくりにしてしまっているためではないかと考えられている。
 一方で、2015年に我々は、スイマーパピー症候群を呈したラブラドールレトリーバーの仔犬2頭に遭遇した。本発表ではまず、この2頭に対する治療、転機などを示すとともに、同様の発症例を継続して経験していた北海道盲導犬協会における7年間、レトリーバー種603頭の仔犬の出生データをもとにして、その発症要因となり得るリスク因子や、血統図をもとにした遺伝学的影響についての検討について報告する。実際の臨床現場から得られた知見を端緒とし、その病態解明までつなげたいという取り組みを、途中経過ではあるが本報告会にて発表させていただければと思っている。
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石川真悟先生(大動物臨床医学研究グループ)
タイトル:大動物における難治性疾病のコントロールを目指して
馬や牛はその飼育目的により重要な疾病が異なっている。わが国において馬は主に競走、競技用に個別飼育されており、屈腱炎、関節炎および蹄葉炎といった運動器疾病が重要である。一方で、牛は畜産用に群飼育されているため、肺炎、腸炎および乳房炎といった感染症が重要である。それぞれ様々なアプローチで研究が行われているが、現在もコントロールできておらず、難治性の疾病として問題となっている。
我々は、馬において運動器疾病に対する間葉系幹細胞(MSC)による代替療法に着目し、MSCを低侵襲で分離するために歯髄や末梢血からの分離方法の検討や、移植拒絶に関与する馬MHC(ELA)ハプロタイプについての研究を行ってきた。また、牛においては肺胞性肺炎である牛肺炎の真の原因微生物や免疫機構を明らかにするために、気管支肺胞洗浄液(BALF)を活用し、真の肺炎原因微生物の探索、抗菌薬の肺胞領域への薬剤移行性、FACSを用いたBALF中免疫細胞の解析法、肺胞マクロファージの特性、鼻腔粘膜ワクチンによる非特異的効果などについて研究してきた。
研究を進める中で、我々はどちらも根底にあるのは「免疫と炎症」ではないかと考えるようになった。しかし、草食動物である馬や牛は、多くの免疫機構がヒトやマウスなどとは異なることが明らかとなっており、免疫についての基礎的な知見が非常に少なく「免疫と炎症」に関する分子生物学的な研究はほとんど進んでいない。特に自然免疫については、どちらの動物でもパターン認識受容体やインフラマソームに関わる分子について詳細な機能解析がなされておらず、代替療法、ワクチン開発および分子標的治療の発展を妨げてしまっていると考えられる。
本研究発表会では、上述のこれまで行ってきた研究、およびこれから大阪府立大学で実施を考えている研究の方向性について紹介させていただきたい。

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