新たな治療への挑戦

犬口腔内メラノーマに対するふきのとうエキスの抗がん効果の検証

代表者:野口 俊助

転移を抑制するための有効な治療法が存在しない犬口腔内メラノーマに対して、ふきのとうから抽出した抗がん活性を有する物質(ペタシン)の転移抑制効果を試験しています。ペタシンは、実験的にはメラノーマ細胞の増殖を抑制するとともに転移を抑制することが分かっています(Heishima K, et al. J Clin Invest. 2021)。ペタシンの抗がん効果については、各種メディアでも紹介されました。

対象となるのは、外科手術や放射線治療によって口腔内のメラノーマを治療した後の犬です。局所療法後2週間をめどにペタシンの投与を開始します。現在は、安全性と抗がん効果(局所再発の防止と転移の抑制)について検証を行っているところです。
※本試験はシーシーアイ株式会社からの依頼により、岐阜大学と共同で行っております。


イヌにおけるCG-0321(凍結乾燥製剤)の臨床試験

代表者:野口 俊助

ステージIIIあるいはIVの犬の鼻腔腺癌を対象として、CG-0321の放射線増感作用を検証しています。CG-0321は動物用医薬品としての承認を目指しており、本試験は多施設での2重盲検試験として行っております。これまでに、CG-0321はすでに放射線増感剤としての効果が認められていますが、動物用医薬品としての承認のために改めて安全性と効果の確認を目的に試験を実施しております。

鼻腔腺癌は放射線治療単独でも効果が認められる腫瘍ですが、CG-0321を併用することにより、その効果がより増強されることが期待されています。CG-0321を点滴で投与した後に放射線治療を行います。副作用はほぼ認められておらず、安全性が高く鼻腔腺癌以外の腫瘍にも効果が期待できますで、今後はより治療が難しい肉腫などにも応用が期待される薬剤です。
※本試験は株式会社エム・ティー・スリー・からの依頼を受けて実施しています。


コンパニオンアニマルにおける薬剤耐性菌の疫学調査

代表者:安木 真世

世界的規模で問題となっている薬剤耐性(AMR)感染症は、ヒトに限られた問題ではなく、One world one healthの観点から獣医学領域においても非常に重要です。近年、ヒトと最も密接に関わる伴侶動物の耐性菌について、多数の報告があがっています。AMR感染症のキャリアの可能性が議論されていますが、大規模な動向調査など耐性菌保菌の実態に関する知見が乏しく、未だその詳細は不明のままです(図)。

本研究では、伴侶動物を介した環境、そしてヒトへの耐性菌拡散の可能性の評価、更には「臨床獣医師に対する抗菌薬の適切かつ慎重投与の啓発活動」の基盤の創出を最終目的として、獣医臨床センターに来院した伴侶動物を対象に、耐性菌保菌の実態把握の調査研究を行っています。


樹状細胞治療の放射線治療との併用による腫瘍治療効果の検討

代表者:杉浦 喜久弥

樹状細胞は、「体を害するもの」が何であるかを、攻撃の主体であるリンパ球に示す機能を持ちます(図1)。

図1

この特性を利用したのが「樹状細胞治療」です。体外で育てた樹状細胞を体内に戻すことにより、腫瘍(がん)を治療しますが、がん細胞の多くは正常細胞との区別が困難です(図2)。

図2

放射線はがん細胞を弱らせ、性質や形を変えることができます。そこで、「放射線治療」と「樹状細胞治療」を組み合わせることにより、効果的にがん細胞を除くことができます(図3)。

図3


入院中の生理指標についての調査

代表者:島村 俊介

入院中であるという特殊な環境に加え、何らかの疾患を有している、あるいは手術後であるなど、健康的な日常とは大きく乖離したストレス環境下における犬と一般家庭において健康的な日常を過ごす非ストレス環境下における犬の連続的な生体情報を比較し、動物の健康管理や状態把握への可能性について検討することを目的とした研究を行なっています。


新規開発油分含有人工涙液、スクワラン点眼液、の臨床例における有用性検証

代表者:長谷川 貴史

涙液膜は眼球表面(オキュラーサーフェース)の恒常性維持になくてはならないものであるが、涙液膜の異常状態ではヒトのドライアイと同様の症状が動物にも認められるようになる。このような時には角結膜に様々な異常が引き起こされるため、人工涙液を用いた点眼治療、多くの場合、1-2時間間隔の点眼処置が適用されることとなる。しかし、このような点眼処置を長期間、さらには生涯にわたり実施することは、現実的に不可能であり、多くの動物で角結膜障害が重篤化して視覚に異常をきたしてしまう。

以上のような煩雑で非現実的な投薬処置を是正すべく、1日4回程度の点眼処置で済むような長時間作用型の油分含有人工涙液であるスクワラン点眼液を開発し、涙液膜異常の症例に用いてその臨床的有用性を確認している。さらに、スクワラン点眼液が角膜潰瘍の治療薬としても使用可能なことが示唆されているため、この点に関しての検証治験も現在併行して実施しつつある。