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ユビナガコウモリ属コウモリのゲノムに存在するボルナウイルス由来の遺伝子配列の解析に関する論文がFEBS Letters誌に公開されました

ユビナガコウモリ属コウモリのゲノムに存在するボルナウイルス由来の遺伝子配列の解析に関する論文が、FEBS Letters誌に公開されました。

An endogenous bornavirus-like nucleoprotein in miniopterid bats retains the RNA-binding properties of the original viral protein
Yahiro Mukai,Masayuki Horie*,Shohei Kojima,Junna Kawasaki,Ken Maeda,Keizo Tomonaga*
doi: 10.1002/1873-3468.14290

ウイルスの遺伝子配列の一部が生物ゲノムへと組み込まれ、生物ゲノムの一部となる現象を「内在化」と呼びます。多くの脊椎動物のゲノムには、太古のボルナウイルスに由来する遺伝子配列である「内在性ボルナウイルス様配列(Endogenous bornavirus-ilke: EBL配列)」が存在します。これまでにEBL配列の一部が、生物においてなんらかの生体機能をもつことが報告されていました。しかし、内在化後のEBL配列の進化や、由来する遺伝子との機能的な関係についてはほとんど明らかになっていませんでした。

本研究ではボルナウイルスのN遺伝子(ウイルスゲノムRNAに結合するNタンパク質をコードする)に由来する「EBLN」に着目し、RNA結合タンパク質として機能し得るタンパク質をコードするEBLNを同定し、解析を行いました。

In silicoによる予測および分子進化学・分子生物学的な解析により、ユビナガコウモリ属コウモリゲノムに存在するEBLN (miEBLN-1) が、機能をもつRNA結合タンパク質をコードすることが強く示唆されました。生化学的な実験により、miEBLN-1タンパク質が実際にRNAに結合するとともに、ユビナガコウモリ細胞において多数のRNA結合タンパク質と相互作用することを明らかにしました。さらに、ボルナウイルスのRNA結合において重要な役割を果たす4つのアミノ酸残基がmiEBLN-1タンパク質にも保存されており、これらのアミノ酸残基がmiEBLN-1タンパク質のRNA結合能にも重要な役割を果たすことを示しました。

これらの結果から、miEBLN-1は起源となるボルナウイルスのN遺伝子がコードするNタンパク質と類似した生化学的性状を持つタンパク質をコードしており、生体において何らかの重要な役割を持つことが強く示唆されました。残念ながらその機能を明らかにすることはできませんでした。

本研究によって得られた知見は、ウイルスと生物の共進化の解明の一助となることが期待されます。