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爬虫類のフィロウイルスに関する論文がThe Journal of veterinary medical science誌において公開されました

爬虫類のフィロウイルスに関する論文がThe Journal of veterinary medical science誌において公開されました。

Identification of a novel filovirus in a common lancehead (Bothrops atrox (Linnaeus, 1758))
Masayuki Horie
DOI: 10.1292/jvms.21-0285

本研究では公共データベースに存在する爬虫類動物由来のRNA-seqデータを解析し、世界で初めて爬虫類のフィロウイルスを発見しました。

ディープシークエンスは存在する核酸(DNAやRNA)を網羅的に検出する技術です。公共のデータベース(例えばNCBI SRA)には大量のディープシークエンスデータが登録されています。これらのデータの多くはウイルス検出用に取得されたものではありませんが、由来となる動物がウイルスに感染していた場合、シークエンスデータにウイルス由来の配列が含まれます。

フィロウイルスはモノネガウイルス目フィロウイルス科のウイルスで、エボラウイルスなどが知られています。これまで様々な脊椎動物からフィロウイルスが検出されていますが、爬虫類のフィロウイルスは知られていませんでした。

本研究では公共データベースを用いたウイルス探索により、カイサカというヘビ(Bothrops atrox)由来のRNA-seqから新規のフィロウイルスを検出し、その採取地名にちなんでTapajós virus (TAPV) と名付けました。分子系統樹解析の結果、TAPVは既知のフィロウイルスとは遺伝的に極めて遠く、フィロウイルス科の新しい「属」のウイルスであることが示唆されました。

本研究によって、フィロウイルスの多様性と進化に関する新しい知見が得られました。近いうちに、フィロウイルス科に新しい属ができるかもしれません。これまで新しい属の設立につながるようなウイルスを見つけたことはなかったので、とても嬉しいです。