沿革

大阪府立大学における獣医学教育の沿革

1883年 明治16年 大阪獣医学講習所設置 修業年限2年
1888年 明治21年 大阪府立農学校(獣医科)開設 修業年限2〜3年
1926年 大正15年 大仙に学舎移転  
1939年 昭和14年 男子第2部獣医科新設 修業年限2年
1942年 昭和17年 大阪高等獣医学校開設 修業年限3年
1945年 昭和20年 大阪獣医畜産専門学校と改称  
1949年 昭和24年 浪速大学農学部獣医学科設置 修業年限4年
1955年 昭和30年 大阪府立大学農学部獣医学科と改称  
大学院農学研究科獣医学専攻修士課程設置 修業年限修士2年
1964年 昭和39年 大学院農学研究科獣医学専攻博士課程設置 修業年限博士3年
1969/70年 昭和44/5年 中百舌鳥に学舎移転  
1978年 昭和53年 獣医師法改正により修士積み上げ6年制実施 学部4年+修士2年
1984年 昭和59年 6年一貫教育実施 修業年限学部6年
1990年 平成2年 4年制博士課程設置 6講座増設 修業年限博士4年
2000年 平成12年 研究科を部局とする大学院大学へ移行  
2001年 平成13年 獣医学教育高度化に対応するため学科再編
(大講座制導入) 3研究室増設
 
2005年 平成17年 大学の独立行政法人化に伴い,生命環境科学部獣医学科と改称,大学院・学科再編  
2009年 平成21年 りんくうタウンに学舎移転  
2012年 平成24年 大学の組織再編により,学域・学類体制となり生命環境科学域・獣医学類と改称  

わが国の近代的獣医学教育は,明治10年(1877年)国立農事修業場において外国人教師による獣医学教育がなされたことに始まるとされている。この国立農事修業場は,後に駒場農学校,東京農林学校を経て東大獣医学科になった。また明治13年(1880年)下総種畜場において変則的獣医学生徒を募集して邦語による教育が開始され,2年後に駒場農学校に移管され,さらに東大獣医学実科となり東京農工大学のルーツになっている。一方,陸軍においても,明治6年(1873年)に一般から馬医生徒を募集して授業を始め,フランス人による獣医学教育がなされたが,明冶18年(1885年)からは駒場農学校に教育を委託している。また,明治18年には獣医免許規則と獣医開業規則が公布され,免許を得た獣医師でなければ診療業務ができないことになった。翌年には獣医伝染病予防規則が制定され,各府県に獣医採用方の通達がなされ,この頃から各地に獣医学校や獣医学講習所が続出することとなった。

大阪府立大学農学部獣医学科のルーツを史録により辿ると,明治16年(1883年)の「獣医学講習所」の設置に遡る。本講習所は農業の振興への家畜の疾病,治療,更に増殖を司る獣医師の養成の必要性から,大阪府立医学校(現大阪大学医学部の前身)内に開設され,ここに大阪府における獣医教育の第一歩を踏み出した。継いで,明治21年(1888年)10月,旧堺師範学校を仮校舎として大阪府立農学校 (獣医科)が呱々の声をあげ,これが獣医学科の前身となった。大阪府立農学校は明治23年(1890年)に,堺の仮校舎から大阪城ゆかりの名勝地,御勝山(おかちやま)に移転され,宏大な施設を誇ったが,大正15年(1926年)10月に,再び堺市大仙町の仁徳陵に接する聖域に建設された学舎に移転した。

時代の変遷と共に,「獣医科」は「畜産科」(明治42年,1889年)に改称され,更に「獣医畜産科」(大正13年,1923年)と称され,昭和14年(1939年)まで51年を算えた。支那事変の勃発に伴い,陸軍獣医部の要請も強く,教育水準を高めるため,「男子2部獣医科」(昭和14年,1939年)が,更に第2次世界大戦(太平洋戦争)に突入後,これら獣医教育機関が基礎となって「大阪高等獣医学校」(昭和17年,1942年)が専門教育の学校として大阪府立農学校用地内に設立され,「大阪獣医畜産専門学佼」と改称(昭和20年,1945年)された。終戦に伴い,学制の改革によって,「大阪獣医畜産専門学校」は他の在阪の国立,府立の専門学校と合併して「浪速大学」として発足し,農学部獣医学科の母体校となった。

浪速大学は大阪府立大学(昭和30年9月1日,1955年)と改称され,大阪府立大学農学部は昭和44年(1969年)より45年(1970年)にかけて,大仙学舎から現在の中百舌鳥学舎に移転した。その間,大阪府立大学大学院農学研究科獣医学専攻修士課程(マスターコース)が昭和30年(1955年)に開設され,更に昭和39年(1964年)には博士課程(ドクターコース)が開設され,更に充実した獣医学科へと発展を遂げた。

昭和52年(1977年)の獣医師法の改正によって昭和53年(1978年)入学生から修業年限6年で獣医師国家試験受験資格が与えられることになり,いわゆるマスター積み上げ方式が実施された。更に昭和59年(1984年)入学生から6年一貫制の教育がなされ,その卒業に伴い平成2年(1990年)より新制度の4年制ドクターコースが開講された。この対応として同年6講座の新設に伴い獣医2号館が建設された。<ここまでの文章は「大阪府立大学獣医学科の百十年」:110周年記念事業会編纂(1993年)による>

その後,平成12年(2000年)には全国の大学と同様に部局化がおこなわれ,教員の所属が大学院研究科となり,名称も「農学生命科学研究科獣医学専攻」に変更された。さらに平成17年には,大学が地方独立行政法人法の下で「公立大学法人大阪府立大学」となり,研究科と学部の名称も各々,「生命環境科学研究科」および「生命環境科学部」に変更された。平成21年(2009年)4月には,獣医学専攻と獣医学科は充実した教育・研究環境を求めて,新設のりんくうキャンパスに移転し,6月27日には開学記念式典が催された。

平成24年(2012年)には,大学の組織再編により学域・学類体制となり,「生命環境科学部・獣医学科」の名称は「生命環境科学域・獣医学類」に変更された。

このように本年(2014年)には,明冶16年(1883年)に獣医学講習所が開設されて以来,大阪府立大学における獣医学教育体制は連綿として131年の歴史を綴ることになる。